静岡県西部唯一のカトリック系ミッションスクール 浜松海の星高等学校です。2011年、「英語の海の星」が生徒一人ひとりの目標達成のために、さらなる進学強化プログラムを始動しました。
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11月に開催された「女子校再発見シンポジウム」の要旨をご案内いたします

「女子校再発見シンポジウム」
2011年11月3日(木・祝)
アクトシティ浜松コングレスセンター43・44会議室                      
主催 浜松海の星高等学校・静岡県西遠女子学園        
後援 浜松市 浜松市教育委員会

開会挨拶

■本校理事長 北脇保之
 本日は『女子校再発見』シンポジウムに、大勢の方がお越しくださり、ありがとうございます。
  今回のシンポジウムは、西遠女子学園と浜松海の星高等学校が共同で開催いたしました。浜松市と浜松市教育委員会からも後援をいただきましたことを厚くお礼申し上げます。また、基調講演をして下さる天野先生をはじめ、パネルディスカッションのためにお越しいただいた先生方におかれましては、お忙しい中ご協力いただきましたことをお礼申し上げます。
  今回のシンポジウムの趣旨を簡単にご説明させていただきます。
  今、全国的に共学化が進んでおり、静岡県の西部地区も例外ではありません。20年前に9校あった女子校が現在では2校になっています。そうした状況の中、男女共同参画を進め、女子の能力を生かしていくには、女子校というのは大変貴重な選択肢です。男女の特性の違いを理解し、教育していくことは女性にとって、とても大切なことです。
残念なことに、日本では重要な意思決定の場に女性が関わることが、他国に比べて、まだまだ少ないと思います。女性をエンパワー、エンカレッジしていくことが不可欠であります。
本日は女子校での教育について、理論と実践を交えて考えてまいりたいと思います。
初めて2校で開催したこのシンポジウムをきっかけに、この地域において女子校を考えるスタートにしたいと考えています。
皆様の積極的な参加をお願いします。

基調講演「変わる社会・女子校のあした」 東京家政学院大学学長 天野正子 

はじめに
  ・ 専門は教育社会学(日本・アメリカ・イギリスの事例を研究)
  ・ 専門分野と経験から女子校の存在意義を分析
  ・ 【学生時代】企画運営を生徒に任されていた
  ・ 【教師時代】女子校→男子に頼らない、視線を気にしない、女子校の仕掛け
  ・ 思春期−他者からの評価に過敏(特に異性)
  ・ 自分自身の評価を認めることが大切
  ・ 女子校−他者からの評価に否定的にならない→自分自身の価値を認める

1.共学化の波のなかで
  ・1999年→2009年の変化
  ・女子校40%→30%
  ・共学校42%→57%
  ・別学校から共学校へのシフトが顕著

2.男女共同参画時代→女子校は時代遅れ?
  ・参加と参画は違う
  ・参画−ものごとを決める場への参加
  ・参加−存在しているだけ
  ・管理職の女性比率が極めて低い(日本10%・ドイツ37%・アメリカ47%)
  ・女子校→リーダーシップ、フォロワーシップを発揮する場に恵まれている
  ・求められる「いのちと暮らし」→女性の方が適性あり

3.問われる男子中心の共学環境〜教育社会学の知見から
  ・共学は戦後男女平等のシンボルであったが、実際には男女が平等に扱われてはいない。
  ・教育社会学が「男子優先(第一の存在)/女子があと(第二の存在)」として扱いやすい共学校の実態を明らかに。
   学校では生徒をカリキュラムに基づいて指導しているが、そこに隠れた問題がある。

【見えるカリキュラム】
国語・数学など誰の目にも見えるカリキュラムに沿って指導している場合、「どの教科でも男女対等で、女子でも努力すれば
何でもできる」という男女平等のメッセージを伝えている。

【隠れたカリキュラム】
学校や教師が意識しないで生徒に伝えているもの。
教師は男女をわけて扱おうとはしていないが、学校の慣習や進路指導等を通じて「男子優先」ということを無意識のうちに伝えて
しまっている。
  ・「隠れたカリキュラム」が無意図的に無意識のうちに表れていることが非常に問題である。
   それが最も表れやすいのが進路指導である。
   「男子は歴史や文学を選んではいけない。女子は福祉や保育に進むべきだ」と性別の判断だけで進むべき進路を決め、
   それを生徒へ無意識のうちに勧めてしまっている。

4.イギリスの実験から学ぶ
   ・イギリスの教育科学省の研究
    1980年代 イギリスでは
    「理数系の進路で女子が伸び悩むのはなぜか?」
    「共学よりも女子校の方が理数系の大学を選ぶ女子が多いのではないか?」
    
【例えば理科の実験で】
●共学校…
男子が実験のメイン(面白い)部分を担当
女子は結果を記録したり道具の片付けをしたりなど、実験の手伝いに回り、実験の面白さを知らない

●女子校…
女子が実験の主導権を握ることができ、実験の面白さを経験することができる
また理系の女性の先生が多く、女子が苦手を意識しないような授業を行う

     共学校でも、理系に女性教員を増やす・進路指導に女性教員を配置するなど女子高の良さを取り入れた女子だけの
     特設クラスを設けることを提案する

     1990年末 イギリスでは
      @男子よりも女子の方が理数系の成績が良いという逆転現象
      A理数系への進学率が男女同じになる
      という結果が出た。女子は生まれつき理数系に弱いというわけではなく、環境次第である。
  
   ・フランスでも、男性が先天的に向いていると考えられる理数系の専門分野においても、共学が女子にとって不利に
    働いているという研究結果が出ている。
   
5.女子校の「強み」
   ・共学校よりも女子校の方が進路希望が少ないが、その分少人数教育に徹底することができる。
    大勢の中の一人としてではなく、一人ひとり丁寧に成長に向きあうことができる。
   ・少人数教育の特徴として、知識を伝えるだけではなく、一人ひとり揺さぶってそれぞれの能力や
    可能性を引き出すことができる。
   ・女子だけなので常に「第一の存在」として指導し、個々のやる気を引き出すことができる。
   ・女子校には固有の建学精神があり、人として総合的魅力を引き出す全人教育に力を入れている。
    自己表現力を培う、美しい心や他人を思いやる心を育てるなど、学校によって方針が多様。
   ・就職するだけのワークキャリアだけにとどまらず、将来のビジョンを描けるライフキャリアも育成するなど、学力を伸ばすだけの
   共学校とは違う。

6.女子校の「弱み」
   ・女子だけの閉鎖的な教育環境になりがち
   ・自己否定を経験する機会が少ない
   ・日常に異性がいないのは不自然

以上のような批判をされることが多い。
しかし、これらは地域社会や共学校、男子校と交流を行うことで修復可能である。
社会に大きく開かれた女子校が必要。

7.女子校のあした
女子生徒をエンパワーする女子校であってほしい。そのためには次の5つが必要。
   @ 気持ちのそろった教職員集団
   A 自らの建学の精神を大切にする。一方で時代の変化にアンテナを
   B 家庭とのパートナーシップ
   C 同窓会との緊密な関係
   D 女子校の意義を社会に発信する

女子校シンポジウムを2校で開いたことに敬意を払いたい。お互いに競争する時代ではない。


生徒発表  浜松海の星高等学校2年 市藤さくら

 私は浜松海の星高校に入って、自分は変わったなと感じる事がよくあります。その主な理由は、男女共学ではなく、「女子校」で教育を受けていることによるものだと思っています。「女子校」に対する私の中学生時代のイメージは、正直マイナス要素ばかりでした。例えば、常にグループで行動する女子。いったんグループが固定化されると、お互い歩みよることがない女子の集団。それが、私の「女子校」のイメージでした。
  しかし、2年生になった今、共学だった中学校の頃と比べ、活き活きとしている自分がいます。私が抱いていたイメージとは裏腹に、女子校は、それぞれ自分の目標をもった仲間がたくさんいて、互いに刺激を与え合い、上の目標を目指す者にとっては最適の学び舎です。クラスには、女子しかいないので自然に誰とでも話をできる雰囲気があります。私は多分その雰囲気の中で自分が自然体でいられる事が嬉しくて、入学当初から、何の違和感もなくスンナリと学校生活に慣れることができたのだと思います。
  そんな中、私を一番大きく変えたのは、部活動でした。中学の頃から憧れていた吹奏楽部に入部して、私と同じように上を目指すたくさんの仲間と出会いました。同学年、後輩、年齢問わず、明るい雰囲気を作り出してしまう先輩達のパワーには、入部した当初、正直圧倒されることも多かったのですが、先輩達の温かい指導により、すぐに初対面の中学生や他校生徒にも物おじせずに話をすることができるようになりました。
  以前、なでしこジャパンのキャプテン、澤選手がテレビのインタビューの中で言っていた事ですが、ファッションの話や恋の話などで盛り上がったりすることで、少しずつ女子同士の信頼や絆は深まっていくそうです。私達の部活も、そうした日常のコミュニケーションを通して、心の底から自分をさらけ出せる、女子校ならではのチームワークを発揮しています。これは共学と大きく異なる点だと思います。
  チームワークの先頭に立つリーダーは、もちろん全て女子です。女子校のリーダーは、異性の目を気にしない為、誰に対しても遠慮なく指示を出すことができ、伸び伸びとした雰囲気の中、リーダーシップを発揮できます。実際、先輩は部員一人ひとりをしっかり見て、指摘するところはハッキリと指摘し、それに対し後輩も意見を出す事ができます。これは日常のコミュニケーションで培われた信頼があるからこそ出来る事だと思っています。
  そして部活で培われたリーダーシップは、学校行事でも発揮されます。体育大会では、全学年がたて割りとなり、一年生から三年生までクラスごとに応援合戦が行われます。その応援のほとんどが三年生による自作のダンスですが、これは一年生から三年生までが協力しなければ出来ないものです。最初は全然まとまらず、三年生も上手くリーダーシップを取る事ができません。しかし、練習を重ねていくうちに、各学年同士の協調性が生まれてきます。そして体育大会が近くなると、三年生の応援合戦で優勝したいという熱意が一、二年生をつき動かし本当に全クラスがひとつの気持ちになります。私は今年、蘭組でチームのパワーを思う存分出しきったと思います。ダンスを本当に全員が楽しくおどって、まとまりがあったのではないかと思います。優勝こそできませんでしたが、2位を受賞し、仲間と共に真の充実感を味わうことが出来ました。
  女子校に入って色々な事に気づきました。先ほど述べましたリーダーなどのポジションも、男子がいたら、男子というだけで譲ってしまうのでしょうが、女子校の場合、最初から相手の能力を決めつけず、皆で手分けし責任を担うため、各部所の専門的なリーダーが育ちます。また、部活動の楽器運びのような力仕事では男子がいない分、自分たちでどうしたら効率良く運ぶことができるか、自ら考え協力し合うことが身につきます。日々の女子校での生活の発見が全て私たちの良い経験となり、必ず将来自分の為になる事ばかりだと思います。
  今、私はこの女子校という恵まれた環境の中、部活以外に将来に向けての新たな目標を見つけることができました。私は将来看護師になりたいと思っています。社会の中で自分ができること――いかに社会へ貢献することができるかを考えた場合、看護師という職が私にとって一番、難しいながらも、やりがいのある仕事だと感じたからです。
  浜松海の星高校は、生徒一人一人が互いに切磋琢磨して、自分にとってよいこと、大事なことを求め、学び合うことができる学校です。また、先生方も女子だからと男女差別をするような教育はされません。むしろ、社会における女性の存在の意義、将来の展望を私たちに日々問いかけてくださるので、自分自身の存在を肯定的にとらえることができます。今私は、男子女子という枠を超え、ひとりの人間として自分が成長していると感じています。まだまだ不安もありますが、一年次の頃と比べると、自分自身の中に自信と将来に対する希望がわいてきていると確信できます。将来の目標が決まった今、部活と勉強の両立に励み、幅広いものの見方ができる社会人になりたいと思います。

生徒発表  静岡県西遠女子学園高等学校1年 池谷有貴

 西遠には、女子校だからこそできる学びがあり、一生の友としたい仲間ができる素晴らしい環境があります。 
  私は四年間陸上部を続けています。幅跳びで一センチ、二センチの飛距離を伸ばすために努力してきました。けがやスランプ、勉強との両立など弱音を吐きたくなったとき身近にいてくれたのが先輩たちです。中高一貫の西遠では、中一にとって高校三年生の先輩はある意味先生以上の存在です。先生は一人ですが,私を見守り育ててくれた先輩はたくさんいます。礼儀のあるべき姿や大切さも先輩から教わりました。部活中は練習態度について厳しく叱られたりします。しかし部活が終われば、テレビや歌手の話など学年を越えて盛り上がります。部活後の部室は体と心に新しいエネルギーを与えてくれる場です。
六学年の交流が深まる姉妹活動では、毎日の掃除や運動を姉妹グループごとに実施しています。先輩から勉強などのアドバイスをもらったりもできます。月一回姉妹昼食会も開かれ,誕生日を祝ったりゲームをして触れ合ったりしています。四月の姉妹遠足では明治村や豊橋動物園へ出かけ、姉妹グループでウォークラリーに挑戦、一気にメンバーの距離が近づきました。
  西遠には、礼儀作法を学ぶ「入寮」という行事があります。中学生は年に二回生活会館に宿泊し,食事のマナーや接客の仕方,電話の作法などを教わります。高校生になると指導生として中学生を教える側になります。お茶の飲み方一つにも気配りと美しさが求められることを学び、私たちは日本の心を知る女性として成長していくのです。
  さて,西遠には六カ年を通じで学ぶ「女性学」という学問があります。私が一番楽しみにしているのが女性学弁論大会です。身近な女性を取材して感じたこと、世の中の女性の活躍から考えたことなどテーマが与えられ、クラス予選を経て、代表が大会に進みます。私はこの弁論大会で、女性の可能性や挑戦の素晴らしさに気づき、女性であることを幸せに思います。因みに、私の学年では女性に生まれてよかったと思っている人が全体の七〇%以上を占めています。
その他にも、自らを高め、つながりを深める西遠ならではの行事があります。今年私が頑張ったのが学園祭のHR展です。学園祭は毎年十月に行われますが,HR展のテーマ決めは四月から始まります。五〇を超える企画の中からテーマを絞り,パネルディスカッションをし、一つのテーマに絞っていく過程は、クラス全員が一つになるための大切な歩みといえるでしょう。今年私はHR展責任者に立候補しました。去年はリーダーの指示を聞いて作業する立場でしたが,今回はリーダーとして自分の力を発揮しようと思いました。
  私のクラスでは「真珠」をテーマに,日本の文化や技術の素晴らしさ,環境問題を考えることにしました。夏には実際に鳥羽へ行き,インタビューを通じて真珠の歴史や生産について学びました。その上で展示内容を決め,実際に海女の船や美をテーマにした壁画などを製作しました。力仕事ももちろん女子です。太い木を切り,釘を打ち,つり下げるなど、共学では男子任せの仕事を女子だけでやり遂げます。「女子がやらない仕事をする女子」って格好いいと思います。
  製作過程では意見のぶつかり合いもあり、責任者として対立意見をどうまとめるか悩みました。そんな私をいつも友人が助けてくれました。準備期間中、何度友人の存在に救われたことでしょう。近くにいる友人こそが最大の理解者だと実感し、友情がより堅固になったのを感じました。
  これからも西遠で人間性や絆を培い、人間としてよりよく生きる土台をしっかり作っていきたいと思います。

パネルディスカッション

■パネルディスカッションの進め方についての説明  北脇(モデレーター)
最初に日本女子大学の真橋先生より女子校の意義について、次に?友学園の西川先生と西遠女子学園の岡本先生および私から実践例について10分ずつお話しし、その後女子校の抱えている問題点について、質疑応答、最後にまとめを各人より行う。

【女子校の意義と実践例】

◎ 日本女子大学人間社会学部教育学科教授 真橋美智子
女性教育・家庭教育が専門、本日は教育学の観点から女子校について話す。

1.最初に女子校の歴史を簡単にたどる。今日の女子校の出発点は明治初期の私立の女学校にある。明治5年の学制の発布により
  全国的に初等教育が広がったが中等教育以上は男子の教育が優先された。
2.明治12年の教育令の公布により男女別学が徹底されてから女子の中等教育は私学が担うことになった。なかでもキリスト教系の
  女学校が増加し、教育の質も高く注目された。その後明治32年に宗教教育との関連や、国家意識を高めるために高等女学校令が
  公布され、女子中等教育の法的整備が始まる。高等女学校の1県1校設置により、全国的に女子中等教育が進展した。
  高等女学校の教育は良妻賢母教育で、高等女学校は女性が家庭生活にはいる準備の場とされ、知的教育よりも躾けや技術的な
   教育が重視された。
3.1947年に教育基本法が公布され男女共学が推進された。1948年、公立中学校の83% 私立中学では17%が共学であった。
   高等学校は共学・別学が各校の自由裁量となったため、それまでの伝統や校風などを重んずるために公立でも別学が残る
   ことになった。
4.1950年代後半頃から女子の特性教育が強調されるようになり、1966年の中等審答申では、女子は将来家庭を担うのでその教育的
   配慮が求められ、それが高等学校女子の家庭科重視につながる。
5.1970年代に男女共学は本当に平等か?という論議がされるようになる。共学校に「隠れたカリキュラム」(学校内での目に見えない
   性差別)が存在するという指摘がされるようになる。例えば、教員の男女生徒に対する異なる働きかけにより、男子は理系・女子は
   文系、リーダーシップを取るのは男子・女子はサポート役というような方向付けがなされる。その中で女子校が再評価されるように
   なった。これは日本のみならず欧米でも起こった。イギリスで行われた中等教育を受けている生徒へのアンケート結果によると、
   女子校の生徒のほうが共学校女子より理系科目の選択が多く、男子校の生徒のほうが共学校男子より文系科目の選択が
   多かった。理科の実験を女子だけで行うなど女子単独編制にすることにより、女子の発言が増え積極性が見られた。つまり男女
   共学により平等とはならないということが分かり女子校の再評価がされるようになった。
6.女子校の意義は、主に次の点にある。
  @ 男女の特性にとらわれない進路指導
  A 女性同士の連帯感・自立心を育みやすい。社会ではさまざまな人たちと共同で仕事をする機会が多いので、このような資質を
     身につけておく必要がある。
  B 女性のリーダーシップを身につけられる。男性のいない社会の中で必要に迫られるから。一方女子だけの集団の中でのリーダー
     シップは、社会の中で役立つのかという批判もある。

◎ 鴎友学園女子中学高等学校長 西川邦子
  東京都出身。高校時代は父親の転勤に伴い、公立高校で転校を重ねるが、最後に転入した私立女子校に居心地の良さを感じる。津田塾大学卒業後、鴎友学園女子中学高等学校で教鞭をとる。2010年より校長。
「女子校の意義と鴎友学園の取り組み」
1.鴎友学園は中高一貫教育。現在、約1500人の女子生徒が在籍している。
  1935年(昭和10年)の創立。初代校長市川源三氏。
  建学の理念「慈愛と誠実と創造」
  〈市川の教え〉 1.女性である前に一人の人間であれ
            2.自分の能力を発揮して社会に貢献を
            市川の教えは良妻賢母教育が主流のこの時代に先進的であった。
2.問い直し
   ・性差にとらわれず、自分の本来持っている強みを育てる教育
   ・与えられた可能性を伸ばす教育
    これらを男女別学校で行う意味はなんだろうか?
3.私の実感した女子校のよさ
   ・高校時代転校を重ねて3つ目の女子校で居心地のよさを感じ、自然に自己開示できるようになっ た。
   ・学び本来の面白さを体験した。集団で楽しむことを通して、社会でどう生きるかを考え、大学への興味が深まった。
    友人との自然な交流からも女子校はいいと感じた。
   ・女子だからという縛りから解放された。
   ・自分に向き合い、自分を発信する取り組みがいろいろある。
   ・男子と女子の成長曲線(発達)の違い:身体的にも精神的にも中高時代は違いが大きい。
   ・女子はコミュニケーションを求める傾向がある。  
   ・女子は自己に対して必要以上に批判的になりがちであるので自分自身を認め、自信を持つよう 励まし、自尊感情を持てるような
    取り組みが必要である。
   ・別学では「〜らしさ」にとらわれず、自分の関心を深め、才能を伸ばしていける。
5.自分に似合う自分
   ・中高時代は人生第2の誕生をする時期である。子供の時は親が自分に似合うものを選んでくれたし、親の価値観を通して、
   生活や学習の基本的な態度を学んだ。中高生になると、授業も高度になり、様々な価値観と出会い、自分の「立ち位置」を考える。
   皆と共通なものを選ぶ(迎合する) 時期を経て、自分のとる道を模索し、最終的に自分が選ぶようになる。
6.6年間を通して大切にしていること
   ・他者との関わりの中で自己肯定感をはぐくむ。うまくいかないときも努力を認める。
   ・ありのままの自分でいられる学校を目指し、集団作り環境作りを重視する。
   ・成功失敗の経験の積み重ねと、自己決定できる場の設定をするHR、授業、委員会の中で、生徒が自分でやってみるチャンスを
    多く与える。
7.豊かな人間関係を育むための具体的取り組みとして 
   ・中1のスタート時から様々なグループワーク、エンカウンターを実施している。
   ・席替えを頻繁に行い、お弁当グループを工夫し、多くの友達と自然に触れ合い、自己開示できる ようにしている。
   ・面接週間を年2回実施。家庭との連絡を密に。
   ・中1は8クラス30人程度の少人数制で。
8.集団の中で育つ女子
   ・学校行事(学園祭、運動会、その他のあらゆる行事)を大切にする。
   ・学習:コミュニケーションをとりながら学ぶ。
   ・「受験勉強も集団戦」との考え:1の力が1.5倍になる。
9.私たちの願い
   ・すべての生徒に活躍の場を提供することにより、一人一人が達成感、充実感を味わい、自己肯定 感から、前向きな姿勢で
    生きることができるように。
   ・将来は、リーダーシップもフォロワーシップも兼ね備えた人になるように。

◎ 静岡県西遠女子学園理事長・校長岡本肇
1.静岡県西遠女子学園
   1906(明治39)男尊女卑の時代で、女性は和裁を習う時代に私立女子高等技芸学校として創立される。
   私立女子高等技芸学校として創立される。
     建学の精神「婦人の中に未来の人は眠れり」
        女性は将来、出産・育児をする
                 ↓
        その子供が社会へ出て、活躍する
                 ↓
   母が受けた教育が子供に受け継がれる  
      “生徒のなかに大人になってゆく可能性が眠っている”という意味もある
   戦後→良き社会人・良き家庭人を目指す。
2.入寮指導
   中学(5回)、高校(2〜3回)校内の生活会館という施設で、共同生活をし入寮指導を行なう。
   主に作法・礼儀・品位を学ぶ。
   作法専門の先生を招いて、中学校時代にしっかりと学び、高校生は学んだ知識を活かして下級生に指導をする。
   中学1年〜高校3年はかなり精神差があるが、こういった姉妹活動を通して、自分が理解しできるようになったことを教える難しさ、
   大切さを実感してほしい。将来、母になった時に活かしてほしい。
3.国際教育
   中学3年 豪州修学旅行→一部分二週間の語学研修
   シアトル姉妹校(20年前より)→女子寮に1ヶ月姉妹校の生徒と、短期留学
4.共同学習
   今まで行なってきた授業は、前を向いてよく聞きなさい、一斉授業だった。
   だが、男女に性差があり、特性が違う。
   男性→命令・地位  女性→言語の脳力が高い
   話し合いや教え合いの時間を多くとり、コミュニケーションをとりながら学ぶことで理解が深まる。

5.体育大会
   生徒自らの力で!
   実行委員結成→企画→実行
6.HR展(学園祭)
   生徒に課題を与える。
     ・大きなものを必ず一つ作ること
     ・展示物にあまり文字を使わず、グラフや図を使い伝えること
     ・力仕事も協力して、ひとつのものを作りあげる。

◎ 浜松海の星女学院理事長 北脇保之
女性の力は、日本ではまだしっかりと発揮されていない。そうであるならば、“女性”に焦点を当てた教育が必要である。女性の力は、2011年のノーベル平和賞受賞者(リベリア大統領ら女性3人)の活動に示される通り、貧困や地域紛争などの世界の課題を解決するものとなり得る。女性に向けた、女性を「第一の存在」とする教育が求められている。

<現代の女子教育に必要なこと>
1.「オープン化」する21世紀の世界に目を開かせること
   “ヒト・モノ・カネ・情報”が世界規模で流動する現在、一つの企業や組織にこだわらず活躍できる、個人としての能力を持った女性を
   育てたい。
   ―海の星の教育紹介―
   @ルエナ募金活動 
    アンゴラのルエナ地区に学校を建設することを目的とした「スポンサー募金」を実施。
    ※「スポンサー募金」とは、学校行事の際に生徒が掲げる目標の達成度に応じ、親から寄付金を募る募金活動 
   A東日本大震災募金活動
   B貧困撲滅 Stand-Up  同窓会長の提案を学校側が受けて実施。
   Cジェネシス・プログラム 
    5年前の政府が呼びかけて始まったアジアとの学生交流で、積極的に留学生を受け入れている。
   D留学制度
    留学生の派遣にとどまらず、海外からの受け入れも行っている(年間留学生)。
2.変化の激しい実社会で役に立つ個人の能力を培うこと
   ―海の星の教育紹介―
   E 英語教育
   F 看護・医療・栄養系プログラム(2012〜)
   G 末広会(奉仕活動)
   H 宗教教育
3.リーダーシップ・フォロワーシップを育てること
  リーダーシップは大きな組織に限定されるのではなく、家庭や小さな集団、NPOなどでも必要である。人に呼びかけて事業を
  推進するための基礎となる力を身につけさせたい。
   ―海の星の教育紹介―
  I 体育大会応援合戦
  J ベリタス・プラザ
  K クリスマス・ファンタジア
  L生徒会活動―フードバンク活動
    まだ食べられる安全な食品を各家庭から回収し、生活困窮者などに配給する活動

以上のように、浜松海の星高校では、フランスから来日した修道女たちが創設したという建学の経緯を大切にしながら、世界に目を向け、奉仕の精神にのっとった教育をしている。
     

【女子校教育について、問題点と課題、それに向けた対応策】
北脇(モデレーター):これからの女子校教育について、問題点と課題、それに向けた対応策をそれぞ れ5分程度で発表して
もらいたい。時間の都合上、包括的な形でお願いしたい。

西川:女子校に在籍していると、男子生徒の交流があまりないという点が挙げられる。恋愛対象ではな い異性との関わりについて、
学校側でも適切な場を設定するなどしていかなければならないだろ う。
  また、女子校の女子は理系の進学率が高いと感じる。理系科目は特に魅力的な授業を展開していかなければならない。
現在数学科では、問題を生徒各自が作ってそれを解かせたり、クラスの問題集を作成したり…などの工夫をしているが、
それ以上にカリキュラム上の支援もシステム的に していかなければならない。
  中高時代から“受信”するだけでなく、“発信”する訓練をしていかなければならない。お互い に他人の尊厳を重んじられるように
していきたい。また、悩みながらも企画・運営に携わるような体験を中高のうちに積ませることが、女子の力を発揮するうえでとても
重要であると考える。

岡本:問題は2点ある。1つ目は男女共学の意義は同じカリキュラム・教室・教科書で一緒に学ぶため、社会に出て、男性と同じように
活躍できるといううたい文句だった。しかし、戦後の教育改革により男女平等をうたいながらも、男女共学後60年後の2000年6月に
やっと「男女共同参画」という言葉が登場する。「参加」(そこにいる)から「参画」(決定していく)へ変化した。このことが重要である。
とはいえ、管理職の女性が占める割合は低い。つまり、女性は決める場にいない。参画していない。女性が何かを決めるということは
ない。女子校では何かを決めていく場に参加できる。学力の成長は女子高・共学共に変わらないが、志は共学だと抑えられて
しまうものだ。
現在、市内の小中学校長の男女比は男性の方が多いが、半数は女性であるべきである。女子に志を持たせなくてはならない。
“Boy’s be ambitious.”ではなく、“Girl’s be ambitious.”を学校で行うべきだ。
また最近学力低下がよく話題に上がるが、学力の低下よりも日本人の品性の低下に注目すべきである。学力は目に見えるカリキュラム
に沿って行われるが、品性の育つ教育現場には、目に見えないカリキュラムが存在している。それは学校の校風、伝統、友人、文化、
常識によって徐々につくられていくものである。学力や能力、体力はトレーニング次第で伸びるが、品性はトレーニングではなく友人との
つきあい、学校の文化、常識で身についていくものである。求められる品性は男女で異なる。よって品性を身につけるためには、
男女別々に教育していく必要性がある。

北脇:問題点の一つとして、学校自体や教職員が女子校の意義がどこにあるかをはっきりと認識していないことがあげられる。本日のシンポジウムの狙いでもある。かつてはきちんとしつけができることや女子のみの安心できる教育環境が提供できることを共通理解
としてきた時代もあったが、社会の変化と共に女子校の意義も変わってきている。さまざまな視点から語られてきたが、現在の女子校の
意義を学校や教職員が理解し、具体的な実践につなげていくべきである。そのためには、学内での研究、ディスカッションが必要である。
それが実践できている学校は多いとはいえない。
  二つ目として、地域社会、保護者・女子中学生のなかに進路先として女子校を選択肢から外す人が相当数いる。女子校の経験から
ではなく、ある意味思い込みで女子校を判断している。女子校の立場からするとこの思い込みを変えていく努力をし、女子校を支持する
女子中学生やその保護者を増やすことが大切である。

真橋:本学も幼稚園から大学までの一貫校で、幼稚園を除く、小学校から大学までが女子のみの教育を行っている。現場では同じような
課題を抱えている。各女子校の報告を聞き、それぞれの学校で女子教育に対し意欲的に取り組まれていることがわかる。理数系に力を
入れる、男女共同参画社会に参画できる人材を育てる、伝統をいかしていく等の話があった。
  女性の社会進出に関して言えば、方針を決定する場に進出する女性は世界的に見てもいまだに少ない。その中で、女性はこうある
べきだという性別役割分業意識が根強く残っている。女性であることを意識せずに進学するが、職業選択時に、出産・育児により家庭と
仕事をどう調和させていくかが課題となる。実際本学の学生たちともゼミ等で話し合うが、学生が悩む点である。いろいろと考えては
いるが、性役割にとらわれている部分がある。女子校の課題は、女性だから「〜せねばならない」にとらわれずに、自由に生きる道、
男性とは違う「ライフキャリア」を考える機会を作らねばならないことだ。ライフキャリアは結婚や出産で途切れるものではない。
女子校には長い目でみたライフキャリアを考える機会を提供してもらえることを期待する。一時的に仕事量が減ることがあっても、
生涯を通じたライフキャリアを考えていく機会を設けることが大切だ。大学生も考えてはいるが、早いうちからそういう視点で大学選択、
職業選択をしていけることが望ましいと考える。


【質疑応答】
中井:本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。今日のシンポジウム『女子校再発見』は、女子校の良さを
見直して、再発見し、それを伝える試みだったと思います。
  1人ひとりが、女子校の良さを改めて学んだ機会になったのではないでしょうか。
  北脇さんがおっしゃったように2つの点が大切だと思いました。
  己紹介が遅れましたが、私はこのシンポジウムの資料としても取り上げていただきました、『なぜ男女別学は子どもをのばすのか』
という本を書きました、中井と申します。先日、今日ここにいらっしゃっている西川さんと、第1回男女別学シンポジウムを東京で開催
しました。私は男子校出身なので、本を書くにあたって、女子校のことも知らないと書けないと思い、鴎友学園を訪問させて
いただきました。なぜ、鴎友学園を訪問したかというと、私は長崎に住んでいたのですが、長崎まで鴎友学園がとてもいい教育を
していると伝わっていたからです。いいものは、距離が離れていようと人に伝わるものです。他にもいろいろな学校をまわり、
ニューヨークにまで行きました。
  それでわかったことは、女子校の先生は今、自信をなくしてしまっているのではないか、ということです。女子校での教育の意義を
理解して、伝えようとしている先生が少ないように感じます。そういう意味でも、今回のシンポジウムはとても意義はある取り組み
だったと思います。女子校、男子校両方の良さを伝えていく取り組みがこれからも必要だと思います。
  今度、第2回男女別学シンポジウムを東京で開催する予定です。チラシを持ってきたので、興味のある方は、是非足をお運びください。
  質疑応答というよりは、宣伝になってしまい、申し訳ありません。ありがとうございました。

北脇:男女別学の良さを研究し、世間に伝えていく中井さんの活動はとても心強く思います。

中川:私は、浜松海の星高校を退職し、7〜8年たちました。なぜ、今回のシンポジウムに参加したのかというと、女子教育を
推進していってもらいたいと考えているからです。
  戦後20年、社会が変化し、失われたものが多いと思います。浜松も不況にあえいでいます。日本人は強く賢明な女子で支えられて
いたと感じます。根本的に日本を正し、もう一度日本を取り戻すことが必要であると思います。西遠女子学園は、あこがれの学校でした。
地域を活性化してくれました。これからの浜松そして日本は先生方1人ひとりの教育にかかっていると思います。

北脇:このご意見は私たちへの叱咤激励として、受け止めたいと思います。

【女子校の今後の展望について まとめ】
真橋:実践したことを広く社会に発信していくことで、女子教育に着目する人を増やせるのではないか。

西川:今日のような、女子教育の良さを伝える説明会を積極的に行うべきである。男女ともに歩み寄りつつ、どのように生きていくことが
幸せかを考える種を蒔いていくべきである。

岡本:今日の内容を振り返ると、経験談が多く、科学的根拠に基づいた考察がほとんどない。日本には学術論文が広く一般に
紹介される土壌がない。今後、研究者の立場から女子教育を発信することが必要になってくる。

北脇:開かれた学校にするべきである。同窓会やPTAを通して、社会を取り込んでいくことが必要である。男子生徒との交流も
大切である。

【パネルディスカッションのまとめ】
北脇(モデレーター):大きいテーマの割には、時間が少なく、パネリストの方の発言にも時間の制限がついてしまいまして、
ご迷惑をお掛けいたしました。
これを機会にして、またできれば次回を開催できればと思います。

■閉会挨拶
岡本:今日はありがとうございました。
  今回のシンポジウムの趣旨に対して、同じような考え方のメンバーが集まりましたので、テレビタックルのような大激論を
期待された方には拍子抜けだったと思います。
  静岡県でも共学化が進み、5〜6年前に浜松市立高校が共学化され、公立の女子校がなくなりました。そのころから県全体の
空気が変わってきたように感じます。
  このような逆風が吹き、困難な今こそ、私たち女子校に勤める者が、女子校の存在意義を真剣に考え、女子校の使命を見つけ出す
必要があるのではないでしょうか。ピンチはチャンスといいますので、チャンスととらえ、考え直すいい機会にしたいと思います。
  本日は東京家政学院大学学長の天野正子様、日本女子大学教授の真橋美智子様、?友学園女子中学高等学校長の西川邦子様に
おかれましては、東京からわざわざお越し下さいまして、ありがとうございました。教えられることが多く、女子校についての
考えがより深まりました。
  また、西遠女子学園と海の星高校の共催となっておりますが、すべて海の星高校にお任せするような形になってしまい、
北脇理事長を始め、海の星高校の先生方にはお礼申しあげます。
  このような素晴らしい会が持てましたこと、心より感謝申し上げ、閉会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。